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2017.2.11 : 日米首脳会談



安倍総理大臣とトランプ大統領の初めての日米首脳会談が、日本時間11日午前2時すぎからホワイトハウスで行われました。会談後の共同記者会見で安倍総理大臣は、両国の経済関係をいっそう深化させるため、 麻生副総理兼財務大臣とペンス副大統領の間で対話を進めることで、トランプ大統領と合意したことを明らかにしました。また、沖縄県の尖閣諸島が、アメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用範囲であることを確認したと明言しました。

日米首脳会談終え 両首脳が共同記者会見



安倍総理大臣は、トランプ大統領との初めての日米首脳会談のあとホワイトハウスで共同の記者会見に臨み、両国の経済関係を一層深化させるため、麻生副総理兼財務大臣とペンス副大統領の間で対話を進めることでトランプ大統領と合意したことを明らかにしました。
また、沖縄県の尖閣諸島が、アメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用範囲であることを確認したと明言しました。
この中で、安倍総理大臣は「トランプ大統領は議員や知事など公職の経験は無くても、1年以上にわたる厳しい選挙戦を勝ち抜き、新しい大統領に選出された。まさに民主主義のダイナミズムだ」と述べました。
そして、安倍総理大臣は、自動車産業をはじめ多くの日本企業がアメリカ国内の雇用を創出していると強調したうえで、「日本は高い技術力で大統領の成長戦略に貢献し、米国に新しい雇用を生み出すことができる。日米の経済関係を一層深化させる方策について、今後、麻生副総理兼財務大臣とペンス副大統領の間で、分野横断的な対話を行うことで合意した」と述べました。
さらに、安倍総理大臣は、トランプ大統領が、TPP=環太平洋パートナーシップ協定からの離脱を決め、2国間の貿易協定の締結を目指す姿勢を示していることを踏まえ、「アジア太平洋地域に、自由かつルールに基づいた公正なマーケットを、日米両国のリーダーシップの下で作り上げていく。その強い意思を、今回、私と大統領は確認した」と述べました。
また、TPP協定について、「われわれがアジア太平洋地域に自由でフェアなルールを作って、それを日米がリードしていくのがいちばん重要なポイントで、この重要性は変わっていないだろう」と述べました。
安倍総理大臣は、トランプ大統領が先に日本の金融・為替政策を批判したことに関連して、「為替は、専門家たる日米の財務大臣間で緊密な議論を継続させていくことになった」と述べました。
一方、安全保障について、安倍総理大臣は「アジア太平洋地域の平和と繁栄の礎は、強固な日米同盟だ。その絆は揺るぎないものであり、さらなる強化を進めていくという強い決意を私たちは共有した」と述べたうえで、沖縄県の尖閣諸島が、アメリカによる防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲であることを確認したと明言しました。
さらに、沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題の唯一の解決策は、名護市辺野古への移設だとして、引き続き両国で協力していくことや、海洋進出の動きを強める中国を念頭に、東シナ海や南シナ海などでの力の行使や威嚇による、いかなる現状変更の試みにも反対するという強い意思、それに、北朝鮮による拉致問題の解決の重要性などをトランプ大統領との間で確認したことも明らかにしました。
安倍総理大臣は、世界の難民などの問題について、「世界において、難民の問題、テロの問題に協力して取り組まなければならない。日本は、世界と協力し、日本の果たすべき役割や責任を果たしていきたい」と述べました。
一方、アメリカで7か国の人の入国を一時的に禁止する大統領令に関連して、「それぞれの国々が行っている入国管理、難民政策、移民政策は、内政問題なのでコメントは控えたい」と述べました。




トランプ大統領 「日米同盟は平和と繁栄の礎」

トランプ大統領は、安倍総理大臣との首脳会談のあとの記者会見で「安倍総理大臣を歓迎する。日本は重要な同盟国であり、日米同盟は平和と繁栄の礎だ」と述べ、日米関係を強化していく方針を強調しました。
また、北朝鮮については「核とミサイルの脅威にともに対処していく。この問題の優先順位はとても高い」と述べ日本と連携して対処していく考えを示しました。日本の安全についてトランプ大統領は「われわれは日本の施政権下にあるすべての地域の安全に関与し、極めて重要な同盟をさらに強化していく」と述べるとともに在日アメリカ軍の受け入れについて「われわれの軍を受け入れてくれていることについて日本の人々に感謝したい」と述べました。
トランプ大統領はまた、「安倍総理大臣とは相性がいい。すばらしい関係を築けると思う」と述べ、日米の首脳どうしの個人的な信頼関係の構築に自信を示しました。
一方、記者の質問に答える形で、前日に中国の習近平国家主席と行った電話会談について言及し、「中国の指導者とあたたかい対話を行い、多くのことについて、長時間話をした。アメリカと中国は、うまくやっていく途上にあり、それは日本にとってもいいことだ」と述べ、中国とも建設的な関係を築いていく意向を明らかにしました。
経済の分野についてトランプ大統領は「われわれは自由で公平、両国にとって利益をもたらす貿易関係を目指す」と述べ、双方にとって利益となるよう貿易関係を築いていく姿勢を示しました。






トランプ大統領 共同記者会見で何を語った


日米首脳会談のあと行われた、両首脳の共同記者会見での、トランプ大統領の発言の要旨です。


日本の施政下の全領域の安全に関与

われわれは、日本およびその施政下にあるすべての地域の安全に関与し、この重要な同盟関係をさらに強化していきます。日米同盟は太平洋地域における平和と安定の礎になるものです。両国がこの同盟にさらに重点的に投資し、両国の防衛能力を強化していくことが重要です。両国のリーダーシップの下、防衛能力はさらに強化され、最終的には不可侵のものとなるはずです。


航行の自由 北朝鮮の核・ミサイル対応で協力

われわれは多くの問題に直面しており、両国間の協力は不可欠です。わが国は、能動的かつ積極的に関与するパートナーとしての立場を堅持していきます。われわれは両国共通の利益を推進するために協力します。中でも、この地域に関しては、航行の自由および北朝鮮のミサイルおよび核の脅威からの防衛が含まれます。どちらも非常に優先順位の高い課題だと私は考えています。


自由 公正 相互利益の通商関係を

経済に関しては、自由で公正で、なおかつ互恵的な、つまり両国にとって利益のある通商関係を求めていきます。安倍総理大臣との間で活発な意見交換が行われたことを非常に喜ばしく思います。日本は豊かな歴史と文化を持つ誇り高い国で、アメリカ国民は日本の国とその伝統に深い敬意を抱いています。


米軍駐留受け入れに感謝

米軍を受け入れていることに対し、安倍総理大臣と日本の人々に感謝します。双方の協力によって、両国は太平洋地域、さらにはその域外においても、さらなる調和と安定、そして繁栄をもたらし、数え切れない人の暮らしを向上させる能力があるはずです。


来週新たな安全策

わが国の安全を保つためであれば、必要なことはなんでもするつもりです。
われわれの下した判断は大きな成果を上げるものだと考えており、本来ならこれほどの時間を要するものではありません。なぜなら、安全が最優先されるべきだからです。私が今ここにいるのは、国の安全を確保するためです。
有権者も、私が最高の安全を提供すると感じたのです。そのため、われわれは早急に、わが国のさらなる安全の確保に関わる手を打つつもりです。来週のうちに動きがあるはずです。それに加えて、今後も法廷での手続きを進め、最終的には、この件に関してわれわれが勝利すると確信しています。


多くの企業 雇用がアメリカに戻る

私は選挙に勝ち、大統領になることが決まって以来、自動車メーカーなどの多くの企業にアメリカに戻るよう訴えてきました。そして実際、企業が戻ってきています。今後まもなく、大きな発表があります。その内容については、記者の皆さんの中にもご存じの人がいるでしょう。これまで多くの工場を失ってきましたが、こうした工場が戻ってくることになりました。ミシガン州、オハイオ州、ペンシルベニア州、ノースカロライナ州をはじめ、多くの雇用が失われた地域へと雇用が続々と戻ってくるはずです。フォードやGMなど多くの企業が発表しています。インテルもきのう(9日)、大きな発表を行いました。


安倍首相と相性がよい

安倍総理大臣とニューヨークのトランプ・タワーで会ったときに、すばらしい友情を育むことができました。そのときに非常に長い間、話をしました。
きょう(10日)、安倍総理大臣を出迎えたときに、首相を抱擁しました。
私たちの思いにふさわしい出迎え方だと感じたからです。二人の間には非常に良好な絆があります。非常に相性がよいのです。われわれは、日本との間に非常に良好な関係、長期にわたり相互にメリットをもたらす関係を築いていくでしょう。


中国の習近平国家主席と対話

私はきのう(9日)、中国の(習近平)国家主席と非常によい対話をしました。非常に心温まる会話でした。中国とはよい関係を築く過程にあると考えています。そして、これは日本にも有益なものだと思います。多くのテーマについて議論し、長い話になりました。われわれはまた、さまざまな中国当局の代表者とも話し合いをしています。すべての人にとってうまくいくだろうと確信しています。中国、日本、アメリカ、さらにはこの地域の人すべてにとってです。


公正な競争を

通貨安に関して言えば、私はかなり以前から不満を述べてきました。そして、多くの人の予想よりはるかに早い時期に、われわれ全員が公正な条件で競争できるようになると確信しています。公正な条件というのはこれしかないからです。公正に競争するにはこれしかありません。


税制について近く発表へ

アメリカ合衆国は貿易に関しては、これまで以上に大きな存在になるはずです。これには、わが国の税制が大きく関わっています。この点についても、まもなく発表があるでしょう。これまで以上に優遇策に基づいた税制になります。


医療保険改革オバマケア批判

今よりはるかに安い価格で、すばらしい医療制度も提供します。国民と国にとって、すばらしいものになるはずです。わが国は多くの額を払っていますし、オバマケアは大失敗です。われわれはすばらしい医療制度を、より安い価格で提供するつもりです。国民は大喜びするでしょう。



社説 日米首脳会談 厚遇の次に待つものは

「米国第一」を唱え国際協調に背を向けかねないトランプ米大統領とどういう日米関係を築いていくか、日本外交の難しい挑戦が始まった。
安倍晋三首相がワシントンを訪れ、トランプ氏の就任後初めての会談を行った。
自由貿易や日米同盟の重要性が再確認され、沖縄県・尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であることが共同声明に明記された。
日本側は、これまでのトランプ氏の発言から不安がぬぐえなかったが、両国関係は順調に滑り出したように見える。

日本を満足させた声明

経済と安全保障の二つが中心議題になったが、懸念されたのが経済分野だった。
日米経済について、共同声明は「自由で公正な貿易のルールに基づいて、日米と地域の経済関係を強化する」とうたった。
焦点の自動車問題について、首相は日本企業の現地生産と雇用創出の実績を説明し、トランプ氏は米国への投資を歓迎した。日本側が心配していた為替に関しては、円安誘導との批判はなかったという。
トランプ氏は日本の自動車貿易や為替政策を問題視していたが、ひとまず抑制的に振る舞ったようだ。
また、麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領のもとでの経済対話創設で合意した。日米の利害がぶつかりやすい経済分野は閣僚級の実務協議に委ねる。提案した日本にとっては、過激な発言を繰り返すトランプ氏の関与を薄められる仕組みだ。 一方、安全保障分野は「揺らぐことのない日米同盟」とのメッセージを強調したうえで、尖閣への安保条約適用や、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発で米国が同盟国の防衛に完全に関与することを確認した。
首相への厚遇ぶりも異例だった。 両首脳は会談後、大統領専用機に同乗してトランプ氏の別荘があるフロリダ州に移動した。ゴルフを楽しみ、2夜続けて夕食をともにする。
今回の首相訪米は、トランプ氏との間で日米関係の重要性を再確認するのが主目的だった。その意味で、共同声明は日本側にとっておおむね満足いく内容となった。
ただし、これからさまざまな場面で譲歩を迫られることとセットになる可能性もある。先に日本が取りたいものを与え、米側の要求を拒めなくする戦術かもしれない。
経済では、トランプ氏は2国間の通商協定に意欲的だ。離脱を表明した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)のような多国間交渉よりも、米国の圧倒的な経済力を盾に相手の譲歩を引き出しやすいからだ。
日本は2国間交渉に否定的だが、頭から拒むわけにいかなかった。経済対話の議論が進むにつれ、交渉入りを迫られる場面も予想される。
トランプ氏が前面に乗り出し、日本に自動車や農産物で一方的な市場開放要求を突きつけかねない。
日本に必要なのは、理不尽な主張にはきちんと対抗していくことだ。
多国間の貿易・投資で高水準の自由化を図るTPPの意義も粘り強く説いてほしい。
尖閣諸島への安保条約適用についても、米国が明言したからといって、日中間で尖閣をめぐる武力衝突が起きた場合、米国が必ず対日防衛義務を果たすとは限らない。
「対米追随」では危うい

また、トランプ氏から尖閣への安保適用という言質を取ったことで、日本が通商交渉で米国の無理な要求を受け入れるようでは困る。
在日米軍の駐留経費の負担問題は取り上げられなかったが、今後、防衛費の増額などの形で「応分の負担」を求められる可能性もある。
米中関係の行方も気になる。首相の訪米にあわせるように、トランプ氏と中国の習近平国家主席の電話協議が行われ、米国は、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策を維持する考えを伝えた。
それ自体は前向きな動きだが、トランプ政権が日本と中国を競わせるようにして、自国に有利な条件を引き出そうとするかもしれない。
日米で中国に対抗すると思い込んでいたら、米中関係を正確に認識することができない。日本は中国との関係改善に積極的に動くべきだ。
自国の安全保障を米国に依存する日本は、「対米追随」と批判されながらも、その路線を歩んできた。
それでも米国が、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった共通の価値観に基づいて国際社会を主導しているうちは、矛盾は表れにくかったかもしれない。
だがトランプ政権は、そういう価値観を必ずしも重視していない。
イスラム圏7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、首相が共同記者会見で「内政問題なのでコメントは差し控えたい」と語ったのは残念だ。国際社会の問題であり、メッセージを発信すべきだった。
「揺らぐことのない日米同盟」を確保するため、ただトランプ氏にすり寄るだけでは、日本は国際社会からの信頼を失いかねない。
日本は、米国が内向きにならず、国際協調に関与し続けるよう、つなぎ役を果たす責任がある。


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