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2020.1.3 : ピンクの靴





 陸上長距離界を席巻する「ピンクの靴」の波は、正月の駅伝にも押し寄せた。1日の全日本実業団対抗駅伝  (ニューイヤー駅伝)と2日の箱根駅伝の往路で多くの選手がピンク色を中心としたナイキ社製の厚底シューズを使用。 ともに複数のチームが大会記録や区間配録を塗り替え、指導者らは「記録の物差しを変えないといけない」 「新時代だ」と驚きを隠せなかった。
気象条件に恵まれたとはいえ、箱根駅伝では青学大が従来の往路記録を5分15秒も更新して3年ぶりに優勝。全5選手が別メーカーのものから厚底シューズに履き替えていた。
ニューイヤー駅伝でも1区の選手37人のうち30人超が履き、従来の大会記録を3分25秒も塗り替えて4連覇した旭化成も、7区間中5人が「厚底」だ。
2016年リオデジャネイロ五輪で厚底シューズの試作品を履いた選手が男女マラソンで計5個のメダルを獲得し、トップ選手に広まった。
昨年9月の東京五輪マラソン代表選考会からピンク色のモデルが登場した。
陸上界では底が薄く軽い靴が長距離走に適しているとされてきたが、常識を罹した。
軽くてクッション性のある素材に反発力の強いカーボンファイバー (炭素繊維)のブレードを挟むことで、靴底の反発力とクッション性を両立させた。ある実業団の監督は「5000mで15秒は速くなる」と見ている。
履きこなすには筋力が必要だ。箱根駅伝の「花の2区」で10年間破られなかった区間記録を更新した相沢晃(東洋大)は「推進力は得られるが、履いている人でも成績に差がある。練習を積まないといけない」と強調する。
急速に普及する一方、慎重な意見もある。3万円台と高価な上、ナイキ側は「レース用の製品で数百キロ使用すると効果が落ちる」と認めており、耐久性を重視していない。高校の複数の監督は「経済格差が競技力の差になる」と漏らす。
競泳で08年北京五輪前に英スピード社が開発した高速水着「レーザー・レーサー」など技術革新が進むと賛否は巻き起こる。しかし、普及すれば勝負のために使用する傾向は強まる。厚底シューズも、この流れは加速しそうだ。

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