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世界文化遺産



文化庁は4日、日本が世界文化遺産に推薦していた「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本県)について、登録の可否を事前審査する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が「登録が適当」とユネスコに勧告したと発表した。一方、環境省は世界自然遺産に推薦していた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄県)について、ユネスコの諮問機関、国際自然保護連合(IUCN)が「登録延期」と勧告したことを明らかにした。=一部地域既報 いずれも6月24日~7月4日にバーレーン・マナマで開かれるユネスコ世界遺産委員会の最終審査で正式決定する。文化遺産は勧告に従い認められる可能性が極めて高いが、自然遺産の登録延期は四つの勧告内容のうち下から2番目の評価で、今年の登録は見送られる公算が大きい。
文化遺産が登録されれば、昨年7月の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)に続き18件目。自然遺産は小笠原諸島(東京都)など、これまで4件が登録されている。潜伏キリシタン関連遺産は、現存する国内最古の教会で国宝の大浦天主堂(長崎市)や、島原の乱の舞台となった国指定史跡の原城跡(長崎県南島原市)など12資産で構成。勧告は「禁教期にもかかわらず密に信仰を継続した潜伏キリシタンの独特の文化的伝統の証拠」として普遍的価値を評価した。
政府は2015年1月、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として14資産を推薦したが、イコモスが「禁教期との関わりに重点を置くべきだ」として見直しを求めた。これを受け16年2月に推薦を取り下げ、関連性が薄い2資産を外し、名称を「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に変更し、17年2月に推薦書を再提出していた。
一方、環境省は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、政府が主張した「生態系」「生物多様性」のいずれも「登録基準に合致していない」と評価されたと説明した。

世界遺産

1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき、普遍的な価値がある遺跡や歴史的建造物、自然環境を人類全体の財産として保護する制度。2017年7月時点で文化遺産832件、自然遺産206件、複合遺産35件の計1073件が登録されている。各国の推薦案件は、文化遺産の場合はイコモス、自然遺産の場合はIUCNが登録の可否を調査し、勧告内容をユネスコ世界遺産委員会が審査する。

潜伏キリシタン関連遺産


世界遺産登録を目指す国内二つの推薦地は4日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が出した勧告を巡って明暗が分かれた。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の地元では、世界文化遺産登録を適当とする勧告に喜びの声が上がった。一方で「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録を願う関係者らは登録延期勧告の知らせに肩を落とし、再挑戦を誓った。
構成資産の中には遠藤周作が潜伏キリシタンを描いた小説「沈黙」の舞台とされる長崎市の外海地区もある。これらの地区にある教会などでは信仰を妨げずに観光客らをどう受け入れるかが課題となる。長崎県などは各教会の見学希望を一括で受け付けるインフォメーションセンターを設置したり、教会の管理と案内を担う「教会守」を配置したりと登録をにらんだ取り組みを続けてきた。




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