Forest Studio


2018.5.22: アメフト反則タックル問題で日大選手が記者会見



「自分の弱さ」「続ける権利ない」

アメリカンフットボールの関学大との定期戦で、悪質なタックルで相手を負傷させた日大の宮川泰介選手(20)が22日に東京都内で記者会見した。主な一問一答は次の通り。
--なぜ反則をしてしまったのか。
◆監督やコーチからの指示を判断できなかった自分の弱さだと思う。
--当日、審判の笛は聞こえていたか。
◆(関学大QBがボールを)投げ終わったことは認識していた。
--直後の気持ちは。
◆何かを考えられる状況ではなかった。大変なことをした思いは直後からあった。
--関学大のQBは謝罪は受け入れてくれたか。
◆謝罪をうなずく形で聞いてもらった。
--内田正人前監督(19日付で辞任)の存在について。
◆日本代表に行くなと言われた時もそうだが、「なぜ」と言える関係ではなかった。話す機会がないので、信頼関係は分からない。
--QBを潰す指示があったか。
◆コーチから伝えられたのは潰せという言葉だったと思う。上級生を通じて、秋の試合に相手QBがけがをしていたら得だろうという言葉もあり、けがをさせるという意味で言っていると認識した。
--日大側が言う、指導と受け取った側の乖離(かいり)はあったか。
◆なかったと思う。そういう意味にしか取れなかった。やるしかない状況だった。
--やらなかったらどうなっていたか。
◆分からないが、ずっと練習に出られない状況にはなりたくなかった。
--仲間から「おまえは悪くない」という声は上がったか。
◆上がっていたと思う。指示があったにせよ、やったのは私。人のせいにするのではなく、やってしまった事実がある以上、反省しないといけない。
--競技への思いは。
◆高校から始め、楽しいスポーツで熱中していた。大学で厳しい環境に身を置き、徐々に好きでなくなった。
--今後について。
◆競技を続ける権利はないし、やるつもりもない。
--勉強になったことは。
◆少し考えれば間違えていることを判断できた。自分の意思を強く持つことが重要だと思った。アメフットにかかわらず、自分の意思に反することは、全てにおいてすべきではないと思う。

日大選手の陳述書(要旨)

記者会見の冒頭で日大選手が読み上げた陳述書の要旨は次の通り。
<はじめに>
最初に、けがをさせてしまった関学のQB、ご家族、関学アメフト部、関学大関係者の皆様並びに日大のチームメートに、ご迷惑をお掛けしましたことを深くおわび申し上げます。ただ、私の独断ではありません。
<5月3日>
今年度の試合は4月に2回行われていますが、私は先発で出場しました。5月3日の練習でプレーが悪かったということでコーチから練習を外されました。監督、コーチから「やる気が足りない。闘志が足りない」という指摘を受けるようになっていたので、このプレーをきっかけに外されたのだと思います。その後、監督から「宮川なんかはやる気があるのかないのか分からないので、そういうやつは試合に出さない。やめていい」、井上コーチからは「お前が変わらない限り、練習にも試合にも出さない」と言われました。
<5月4日>
練習前に監督から「日本代表に行っちゃダメだよ」と今年6月に中国で開催される第3回大学世界選手権の日本代表を辞退するように言われました。監督に理由を確認することはとてもできず「分かりました」と答えました。この日は今年度初めて全体で行う守備の個別練習でした。未経験の1年生がいたので、副将がタックルをして私が受ける練習をやってみせるために私がダミー(コンタクト練習用の人形)を持ちました。すると、コーチから「なぜ最初にダミーを持つんだ」と言われてグラウンドを10周走らされました。その日の実戦練習は外されました。
<5月5日>
この日も実戦練習は外されました。練習後、井上コーチから「監督に、お前をどうしたら試合に出せるか聞いたら、相手のQBを1プレー目で潰せば出してやると言われた。『QBを潰しに行くんで僕を使ってください』と監督に言いに行け」と言われました。続けて井上コーチから「関学との定期戦がなくなってもいいだろう」「相手のQBがけがをして秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう」「これは本当にやらなくてはいけないぞ」と念を押され、髪形を丸刈りにしてこいと指示されました。ポジションの先輩から、井上コーチに「宮川に『アライン(隊形での配置)はどこでもいいから、1プレー目からQBを潰せ』と言っとけ」と言われた旨を告げられました。相手を潰すくらいの強い気持ちでやってこいという意味ではなく、本当にやらなくてはいけないのだと追い詰められて悩みました。
<5月6日>(試合当日)
いろいろ悩みましたが、ここでやらなければ後がないと思って試合会場に向かいました。試合のメンバー表に私の名前はありませんでした。その後の試合前のポジション練習時に井上コーチに確認したところ「今行ってこい」と言われたので、監督に対して直接「相手のQBを潰しに行くんで使ってください」と伝えました。監督からは「やらなきゃ意味ないよ」と言われました。戻った私は、井上コーチに、監督と話をしたこと、監督から言われたことを伝え、井上コーチに対して「リード(相手のプレーに反応してボールを追うこと)をしないでQBに突っ込みますよ」と確認しました。井上コーチからは「思い切り行ってこい」と言われました。このことは、同じポジションの人間は聞いていたと思います。その後、試合前の整列の時に、井上コーチが近づいてきて「できませんでしたじゃ、すまされないぞ。分かってるな」と念を押されました。
直後は、何も考えられない状態でした。そのため相手のQBがけがをして代わったことにも気づいていませんでした。1プレー目の反則後、2プレー目が終わり、ベンチに戻った時に、井上コーチから「キャリアー(ボールを持っている選手)に行け」と言われましたが、散々「QBを潰せ」と指示をされていたので、井上コーチの発言の意味が理解できず、再びパスをしてボールを持っていない状態の相手QBにタックルをして、2回目の反則を取られました。3回目の反則は正面から向かってきた相手選手を突いた行為に対して取られました。「やる気がない」として外されていたので、意識的に行った行為でした。
退場になりテントに戻った後、事の重大さに気づき泣いていたところを井上コーチに見られていました。先発と4年生が集められたハドル(円陣)で監督から「こいつのは自分がやらせた。こいつが成長してくれるんならそれでいい。相手のことを考える必要はない」という話がありました。その後、着替えて全員が集まるハドルでも、監督から「周りに聞かれたら、俺がやらせたんだと言え」という話がありました。
井上コーチからは、私が退場になった後、守備ラインの上級生リーダーが、私に相手QBにけがをさせる役割をさせたことをすまなく思って「自分にもやらせてほしい」と申し出たという話を紹介して「お前にそれが言えるのか」「お前のそういうところが足りないと言っているんだ」と言われ、退場後に泣いていたことについても「優しすぎるところがダメなんだ。相手に悪いと思ったんやろ」と責められました。
<5月8日>
井上コーチからグラウンドに呼び出されました。私が待っていると先輩が来て、私の様子を心配してくれました。先輩に「もうアメフトをやりたくない」と伝えると、先輩も「そうだよな」と応じてくれました。当初、コーチ部屋には監督ひとりでした。私と監督が話し始めると、遅れて井上コーチと鈴木コーチが来ました。私が監督に「もうフットボールをやりたくない」と言うと、監督は「あの時、罰退になってるから、お前の処罰は終わってるんだからいい」「世間は監督をたたきたいだけで、お前じゃない。気にするな」と言われました。
その後、監督
は練習に出て行ったので、井上コーチと鈴木コーチの3人で話すようになりました。2人のコーチからは「お前がやめる必要はないだろう」「試合がなくなろうと別にいいだろう」というような話をして、退部を申し出た私を引き留めようとしてきました。しかし、私としては、あんなプレーをしてアメフトを続けるということはとても考えられませんでした。
<最後に>
たとえ監督やコーチに指示されたとしても、私自身が「やらない」という判断をできずに、指示に従って反則行為をしてしまったことが原因であり、その結果、相手選手に卑劣な行為でけがをさせてしまったことについて、退場になった後から今まで、思い悩み、反省してきました。事実を明らかにすることが、償いの第一歩だとして決意しました。


トップ