2018.4.27 南北首脳会談
正恩氏「新しい歴史、出発点」 北朝鮮指導者、初訪韓
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日午前10時15分(日本時間同)、板門店(パンムンジョム)の韓国側施設「平和の家」で首脳会談を開始した。会談冒頭で金委員長は「新しい歴史の出発点となるような思いでここに来た」と述べた。
これに先立ち、金委員長は軍事境界線でにこやかに出迎えた文氏と握手し、徒歩で韓国入りした。北朝鮮の最高指導者による訪韓は初めて。朝鮮半島情勢は新たな転換期を迎えた。
南北首脳会談は約10年半ぶり、2011年12月に金正恩体制になってから初めて。
同日午前9時半、両首脳は軍事境界線をはさんで笑顔で握手を交わし、金委員長は徒歩で韓国入りした。板門店共同取材団によると、その際、金委員長が「歴史的場所であり、感動的だ」と述べると、文大統領は「英断だ」と応じた。
さらに、文大統領は金委員長の勧めに応じ、一時、手をつないで共に南北軍事境界線をまたいで北朝鮮側へと足を踏み入れた。
韓国側の説明によると、金委員長が境界線を越えた際、文大統領が「私は、いつここを越えられるのでしょうかね」と話を向けたところ、金委員長が「では今越えてみますか」と勧め、2人で北朝鮮側に渡った。
両首脳はそれぞれの公式随行員を紹介し、韓国側施設をバックに随行員らとともに記念撮影に臨んだ。金委員長が文大統領に撮影を誘うような仕草もあった。
金委員長は韓国軍の儀仗(ぎじょう)隊による栄誉礼を受けた後、会議場に入った。平和の家に到着した金委員長は芳名録に「新しい歴史はこれから 平和の時代 歴史の出発点にて」と記して署名した。
また、これまでの南北関係などの経緯を振り返り、「合意が発表されても、履行されなければ期待した人たちを失望させるだろう」と述べた。関係各国が過去の合意を履行していないと不満を語ったとみられる。そのうえで「今日は懸案や関心事を胸襟を開いて話し合い、良い結果を生み出したい」と語った。
これに対し、文大統領は「全世界が注目している。それだけに私たちの肩にかかる重圧も大きい。史上初めて(金委員長が)軍事境界線を越えた瞬間、板門店は平和の象徴になった」と述べた。
会談は午前1回、午後1回の計2回行われ、午前の部は正午前に終了した。
北朝鮮側の随行員には南北関係の担当者だけでなく李洙〓(リスヨン)党副委員長、李容浩(リヨンホ)外相ら国際・外交ライン、そして李明秀(リミョンス)朝鮮人民軍総参謀長、朴永植(パクヨンシク)人民武力相といった軍の責任者が含まれた。これについて韓国大統領府の任秘書室長は記者会見で「非核化や恒久的な平和定着、南北間の緊張緩和などの議題を重視する姿勢の表れだと理解している」と述べていた。
南北首脳会談は、00年に韓国の金大中(キムデジュン)大統領と北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記▽07年に盧武鉉(ノムヒョン)大統領と金総書記--以来今回で3回目。北朝鮮の朝鮮中央放送は27日午前6時(日本時間同6時半)の定時ニュースで、金委員長が同日未明、首脳会談に出席するため、平壌を出発したと報じた。議題について「北南関係を改善し、
朝鮮半島の平和と繁栄、統一の問題について、虚心坦懐(たんかい)に議論する」と報じたが、非核化には触れなかった。
韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は、個別に昼食と休憩を取ったあと、午後4時半ごろ、パンムンジョム(板門店)の軍事境界線の近くで、「平和と繁栄」を象徴する松を記念に植樹しました。
植樹には、韓国南部のハルラ山(漢拏山)の土と北朝鮮北部のペクトゥ山(白頭山)の土が混ぜて使われ、キム委員長が、ソウルを流れる川、ハンガン(漢江)の水を、ムン大統領が、ピョンヤンを流れる川、テドンガン(大同江)の水を、それぞれ、松にかけました。
植えられた松の横には「平和と繁栄を植える」というメッセージとともに、両首脳の署名が刻まれた記念碑が設置されました。
このあと両首脳は2人だけで散歩をしながら言葉を交わしたあと、午後の会談に臨む予定です。
南北首脳会談を行った韓国のムン・ジェイン大統領(文在寅)と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は、27日午後6時ごろ、共同宣言に署名し、北朝鮮の核問題について、「南北は完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」としています。また、朝鮮戦争の終戦を宣言して平和協定を結ぶため、南北とアメリカの3者、さらには中国も加えた4者による協議を積極的に推進することで合意しました。
10年半ぶり、3回目となる南北首脳会談は、軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)の韓国側の施設、「平和の家」で、27日午前10時15分から開かれ、休憩を挟んで、午後も両首脳だけによる散策や話し合いのあと、会談を再開し、午後6時ごろ、「パンムンジョム宣言」と名づけた共同宣言に署名しました。
それによりますと、南北は、北朝鮮の核問題について、「北の主導的な措置は、朝鮮半島の非核化に非常に大きな意義があった」として、先にキム委員長が核実験やICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験の中止、それに核実験場の閉鎖を表明したことを高く評価しました。
そのうえで、「南北は完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認し、非核化のための国際社会の支持と協力のために積極的に努力する」としています。
ただ、北朝鮮がすでに開発した核兵器を放棄する具体的な手法や時期については何も言及がなく、今後、アメリカと北朝鮮の首脳会談における議論にゆだねられた形となりました。
一方、朝鮮戦争の休戦協定に替わる恒久的な平和体制を目指すことに関しては、「南北は休戦65年のことし、終戦を宣言して休戦協定を平和協定に転換するために、南北とアメリカの3者、または、南北と米中の4者会談の開催を積極的に推進することになった」としています。
また、緊張を緩和するための措置として、南北は、来月1日から軍事境界線一帯で宣伝放送とビラの散布をはじめとするすべての敵対行為を中止して、その手段を撤廃し、今後、非武装地帯を実質的な平和地帯とすることにし、朝鮮半島西側の黄海に「平和水域」を設けて、偶発的な軍事衝突を防ぐとしています。
このほか南北は、北朝鮮南西部のケソン(開城)に南北双方の当局者が常駐する共同連絡事務所を設置することや、朝鮮戦争などで南北に離ればなれになった離散家族の再会に向けて赤十字の会談を行うこと、それに、ムン大統領がことし秋にピョンヤンを訪問することで合意しました。