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2018 相撲 初場所 期待の3人



元横綱・日馬富士の傷害事件で揺れた大相撲は14日に初場所初日を迎える。過去最低の56勝で横綱・白鵬が2年ぶりに首位に返り咲いた昨年の年間最多勝争いは、関脇・御嶽海(25)=出羽海部屋=と新小結の貴景勝(21)=貴乃花部屋=が54勝、前頭筆頭の北勝富士(25)=八角部屋=が52勝で続いた。いずれも押し相撲を身上とし、自己最高位で初場所に臨む。今年、さらなる飛躍が期待される3人の新鋭に焦点を当てる。

関脇・御嶽海(25)

次期・大関候補の筆頭だ。昨年は全6場所を幕内でただ一人勝ち越し、手応えをつかんだ。「なかなかできないことをやれた。今後につながる」。4場所連続の関脇に「まずはこの地位を1年間、守り続けたい。ただ、チャンスがあれば目指したい」と、今年は大関取りも視野に入れる。
昨年春場所に小結に復帰して以降、三役を守り続けているが、大関取りの足場になる2桁白星には届いていない。「もう少し自分の気持ちが乗ってくれば、あと1、2番は勝てると思う」と自己分析する。
押し相撲だけに、重視するのが立ち合いの踏み込みだ。「(1場所)15番のうち、10番は安定した立ち合いをしたい。相手が1歩なら自分は2歩踏み込んでいけるように」。稽古(けいこ)でも立ち合いの鋭さに磨きをかける。3日に行われた出羽海一門の連合稽古で、大関・豪栄道の胸を借りた。何番も続けて取る「三番稽古」で13番。力強い踏み込みから押し出す場面も見られた。
東洋大出身で学生横綱とアマチュア横綱の2冠を獲得し、幕下10枚目格付け出しでデビューした。幕下と十両をともに2場所で通過した同学年の出世頭がこの1年も先頭を突き進む。




小結・貴景勝(21)

埼玉栄高在学中の初土俵から3年余り、新入幕からちょうど1年で「目標だった」三役に昇進した。しかも貴乃花部屋では初の三役力士。「関脇に上がりたい」と、今年の目標に掲げる。
昨年11月の九州場所2日目に元横綱・日馬富士を押し出しで破った。翌日に兄弟子の貴ノ岩に対する元横綱の傷害事件が発覚し、くしくも元横綱の現役最後の相手になった。部屋が異様な雰囲気に包まれる中、2横綱・1大関からの白星を含む、自己最多タイの11勝を挙げ、2場所連続で殊勲賞を獲得した。
前頭筆頭だった昨年の名古屋場所は5勝にとどまり上位の壁にはね返されたが、その後の2場所は勝ち越し。要因は「勝ちを考えると、体の反応が鈍る。力を出し切ることだけを考えたら勝率も上がった」。身長175センチと小柄ながら、頭から当たって、まわしを遠ざけて圧力をかける攻めに徹する。
九州場所終盤の取組で口の中を切り、唇を腫らしながらも土俵に上がり続けた。食事を取ることも難しかったが、「おかゆを作ってくれた」兄弟子らの支えを受けた。「関脇は関脇になって見える景色がある。大関を考えるのは、それから」と自らの将来像を描く。




前頭筆頭・北勝富士(25)

昨年11月の九州場所は終盤まで優勝争いに絡んだ。幕内自己最多を更新する11勝を挙げ、番付も自己最高の前頭筆頭に上げた。「もう一度、優勝争いをしたい」と大きな目を輝かせる。
師匠である日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)の教えを守り、183センチ、161キロと恵まれた体を生かして押し相撲を貫く。九州場所は13日目までトップに1差で食らいついた。14日目に21歳の小結・阿武咲に敗れて白鵬の優勝を許した。「優勝決定を千秋楽まで持ち越せば」と話していた師匠の及第点には届かなかった。それでも初の三賞となる技能賞を受賞した。
入幕5場所目の昨年の名古屋場所から上位陣と総当たりする幕内上位に定着した。名古屋場所は横綱初挑戦で鶴竜を破った。続く秋場所は元日馬富士から、九州場所は初対戦だった稀勢の里からと、3場所続けて金星を挙げた。埼玉栄高で高校横綱、日体大でも学生横綱のタイトルを手にし、元々、相撲のうまさには定評がある。
しこ名は、師匠の第61代横綱「北勝海」と、そのまた師匠の第52代横綱「北の富士」から2文字ずつ取った。その名に恥じぬよう、不祥事明けの初場所で土俵を盛り上げる覚悟だ。




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