2018.1.6 国民栄誉賞 決定
羽生善治永世7冠、井山裕太7冠
国民栄誉賞を同時受賞することになった永世7冠達成の羽生善治氏(47)と、7冠を再制覇した井山裕太氏(28)=本因坊文裕(もんゆう)。2人は一時の強さだけにとどまらず、長きにわたり安定した力を発揮し、あくなき成長を求め続けた。囲碁将棋のタイトルは数々の対局を経て到達できる頂。さらに永世・名誉の称号は、タイトルを何度も獲得しなければ名乗ることができない。それぞれの道のりを振り返った。
羽生氏は1995年、タイトルを連続5期獲得したことで永世棋王の資格を得た。これを皮切りに、20代のうちに四つの永世資格を手中に収めた。しかし永世名人(通算5期)、永世竜王(連続5期または通算7期)への道は困難を極めた。
初の名人獲得は94年。連続3期保持し、永世称号も間近と思われたが、大きく立ちはだかったのは森内俊之九段(47)ら、同世代のライバルだった。森内九段は、初の名人獲得では羽生氏に後れをとったものの、2007年には先んじて永世名人(十八世)に。羽生氏は翌年、森内九段を降し、ようやく永世名人(十九世)にたどり着いた。
永世竜王を巡ってしのぎを削ったのは、渡辺明棋王(33)だった。08年の竜王戦七番勝負は勝った方が資格獲得という大一番となったが、3連勝後の4連敗で、渡辺棋王に先を越された。その後、10年にも挑戦したが及ばず、永世資格に王手をかけてから昨年の獲得まで15年を要した。
同世代、追う年下世代とせめぎ合い、重ねてきた名勝負。それが「永世7冠」の価値を更に高めた。
井山氏は2013年、囲碁界初の6冠を達成。全7冠制覇への期待は、いやがうえにも高まった。
残るタイトルの十段は、挑戦者になるまで一度も負けられないトーナメント一発勝負。井山氏はトーナメントを勝ち上がれず、挑戦の機会を逃している間に、14年には4冠まで退いた。加えて翌年初めの棋聖戦七番勝負でも、3連勝の後に3連敗、さらにもう一つのタイトルを逸する直前まで追い込まれた。
井山氏は驚異的な復調を見せる。棋聖を守り、「棋士人生最大のピンチ」(井山氏)を乗り越えて達成したのが16年、1度目の7冠だった。その後、タイトル戦5連覇で永世本因坊、名誉碁聖、名誉棋聖の資格を得た。
昨年の2度目の7冠は高尾紳路九段(41)に苦杯をなめ、名人を失ったところから始まっている。約1年をかけ残る6冠をすべて防衛したうえ、高尾九段とのリターンマッチを制するという離れ業をやってのけた。
一度は失敗しても、それを糧に結果を残してきた井山氏の「復元力」。国際棋戦を戦い、世界を見据えてきたからこそ果たせた史上初の「7冠再制覇」だった。