2017.9.1 : 新聞掲載:サッカー . 18年W杯アジア最終予選 6大会連続出場
ワールドカップ(W杯)行きを告げる試合終了の笛が埼玉スタジアムに鳴り響くと、サッカー日本代表のハリルホジッチ監督(65)は涙を流した。妥協を許さない姿勢で日本を指揮した「仕事の鬼」が、試合後の場内インタビューではフランス語、そして日本語で「ありがとうございます」と観客らに感謝。喜びに沸く選手から水をかけられると、気持ちよさそうに受け止めた。
ハリルホジッチ監督は2014年W杯ブラジル大会でアルジェリア代表を初の16強に導いた。そして15年3月、八百長疑惑で解任されたアギーレ前監督の後任として日本代表の指揮を請け負った。
「負けると病気になる」と言う生来の負けず嫌いは「何事もやるなら100%」。日本サッカー協会になかった監督執務室を設けさせて毎日通い、協会関係者が「ほとんど病気」と驚くほど多くの映像に見入る。50人以上の日本代表候補選手や対戦相手の情報を収集、分析し、起用法や戦術を考え抜く。わずかな練習で布陣を変える大胆さもあり、この日のオーストラリア戦はその真骨頂だった。選手に対しても体脂肪率の管理を徹底させるなど規律を重視し摩擦を恐れない姿勢を貫いた。
苦難の歩みもあってか、人として見せるまなざしは温かい。昨年4月に起きた熊本地震の惨状を、戦禍に見舞われた祖国に重ねて心を痛め、被災地を訪れて子供たちにW杯出場を約束した。日本代表の長谷部誠主将(33)=アイントラハト・フランクフルト=もハリルホジッチ監督を「物事を正直に全部話すので誤解されやすいが、ぐいぐい引っ張っていくリーダーが日本に必要。思考が違う人と一緒に仕事をすることで選手も成長できる」と信頼していた。
ただ、試合後の記者会見では言葉少なだったハリルホジッチ監督。「プライベートで問題があり(チームに)残るか残らないか分からない。この拍手は二度と忘れない」と話し、質問を受け付けずに会場を後にした。