2016.12.2 : ユネスコ無形文化遺産
山・鉾・屋台、登録決定
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会が、国内18府県33件の祭り「山・鉾(ほこ)・屋台行事」の無形文化遺産登録を決めた。伝統行事を受け継いできた地元は祝福ムードに包まれた。
「土崎神明社祭の曳山(ひきやま)行事」の登録が決まった秋田市の土崎神明社には1日午前2時過ぎに吉報が届き、待ちわびた約20人の関係者から一斉に歓声が上がった。
曳山行事は約230年前から伝わり、毎年7月20、21日に勇壮な武者人形や世相を風刺した「見返し」を飾った曳山が練り歩く。
行事の保存に携わる「土崎神明社奉賛会」の小林一彦会長らは1日午前に市役所を訪れ、穂積志(もとむ)市長に登録決定を報告。小林会長は「これまで長らく伝わってきた祭りの心を、後世に正しく伝えていきたい」と話し、穂積市長は「関係者の今までのご苦労に感謝と敬意を表したい」と祝福した。市役所前では「祝賀看板」の除幕式があり、保存会によるおはやしが披露された。
「鹿沼今宮神社祭の屋台行事」の登録が決まった栃木県鹿沼市では1日、記念式典が開かれ、佐藤信市長らがくす玉を割って祝った。鹿沼いまみや付け祭り保存会の佐川徹三副会長は「ユネスコ登録なんて数年前までは想像しなかったが、先達たちの情熱と努力が実を結んだ。今後は彫刻屋台を守り伝えていかねばならない」と喜んだ。
屋台行事は今宮神社の例祭が中心で、氏子27町から二十数台の彫刻屋台が奉納される。屋台に施された豪華な彫刻は日光東照宮を手がけた宮大工の影響を受けたとされる。見どころは境内への繰り込みや繰り出しで、屋台引き回しの際におはやしを競い合う「ぶっつけ」も名物だ。記念式典会場にはきらびやかな彫刻屋台が展示され、集まった神社の氏子ら関係者約150人が万歳を繰り返した。
「山・鉾・屋台行事」は平和や災厄防除を願って営まれる祭礼行事。登録が決まった33件はすべて国の重要無形民俗文化財に指定され、地域住民が行事の運営を分担してきた。
33件のうち「京都祇園祭の山鉾行事」(京都市)と「日立風流物(ふりゅうもの)」(茨城県日立市)は2009年に登録されていたが、政府が昨年3月に特徴の似た行事として一括申請していた。