Forest Studio

2019.4.12 : 桜田五輪大臣更迭

 

東京新聞「社説」

遅きに失した感がある。桜田義孝五輪相(69)が辞任した。事実上の更迭だが、これまでも不適切な言動を繰り返してきた。桜田氏を擁護し、続投を許してきた安倍政権の体質こそ問題ではないのか。
閣僚辞任の直接のきっかけは、十日夜、東京都内で開かれた自民党の高橋比奈子衆院議員(比例東北ブロック)の政治資金パーティーでの発言。あいさつに立った桜田氏は「復興以上に大事なのは高橋さんだ」と、支持を呼び掛けた。
発言の中で、東日本大震災の被災地復興への協力も呼び掛けてはいるが、復興よりも自民党議員の当選の方が大事だという発言は、内閣の一員として、今も苦しむ被災者と真剣に向き合っているとは言い難い。
桜田氏は発言からほどなく、安倍晋三首相を首相官邸に訪ね、辞表を提出。首相は辞表の受理後、記者団に「被災地の皆さんに深くおわびしたい」「今後も東北の復興に全力を傾ける」と述べた。
桜田氏の発言内容は許し難く、近く投開票される衆院補選や統一地方選後半戦、夏の参院選を考えれば、閣僚辞任は避けられないと首相官邸は判断したのだろう。
とはいえ、そもそもなぜ桜田氏を閣僚に起用し、これまで続投を認めてきたのか、理解に苦しむ。 桜田氏は昨年十月の就任当初から不適切発言を繰り返してきた。
昨年の臨時国会では二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの基本コンセプトや大会ビジョン、政府の最終負担額を即答できず、要領を得ない答弁を繰り返した。
今年に入ってからも、競泳の池江璃花子選手による白血病公表を「がっかりした」と述べたり、震災被災地の道路被害について「健全に動いていたから良かった」と事実誤認の発言をするなど、不適切発言と謝罪を繰り返してきた。
閣僚としてのみならず、国民を代表する国会議員として、そもそも適任だったのだろうか。
安倍内閣では、桜田氏に限らず閣僚らの失言があっても、首相は「しっかりと職務を果たしてもらいたい」などと擁護し、問題が拡大して初めて辞表を提出させ、任命責任を認めてきた。「批判は真摯(しんし)に受け止める」とも述べてきた。しかし、責任を自ら取ることはない。この繰り返しだ。
問題があっても自らの非を認めず、数の力を背景に強引に突破する。長期政権のおごりとも言えるそうした政権の体質そのものが、桜田氏の責任と合わせて、厳しく問われなければならない。


トップ