2018.9.9 : テニス全米オープン制覇
テニスの四大大会最終戦、全米オープンは8日、女子シングルスの決勝が行われ、大坂なおみ選手がアメリカのセリーナ・ウィリアムズ選手にセットカウント2対0で勝って優勝を果たしました。
四大大会のシングルスで日本選手が優勝するのは、男女を通じて初めてです。
世界ランキング19位、20歳の大坂選手は準決勝までの6試合で5試合をストレート勝ちして決勝に進みました。
決勝の相手は大坂選手が四大大会の決勝で対戦したいと幼い頃から夢見ていた元世界1位、アメリカのセリーナ・ウィリアムズ選手でした。
ウィリアムズ選手は去年9月に娘を出産しツアーに復帰した、ことし3月には大坂選手に敗れましたが、その後の四大大会ウィンブルドン選手権で準優勝を果たしています。
試合は第1セット、大坂選手がラリーを丁寧につないで主導権を握り、ウィリアムズ選手のミスを誘って、このセットを6-2で取りました。
第2セットでは精度の高いショットでウィリアムズ選手を左右に走らせポイントを重ねました。
このセットでは、ウィリアムズ選手が禁止されている試合中のコーチからの助言があったと審判から判定されたことに加え、ラケットをたたきつけて壊したことから、警告が与えられ、第6ゲームで大坂選手に1ポイントが与えられました。
さらにウィリアムズ選手の審判への暴言で第8ゲームが大坂選手に与えられて、5-3となりました。
観客の大きなブーイングの中、集中力を切らさなかった大坂選手が最後は6-4でこのセットを奪い、セットカウント2対0で優勝を果たしました。
四大大会のシングルスで日本選手が優勝するのは、男女を通じて初めてです。
初優勝を果たした大坂なおみ選手は、表彰式でのインタビューで「全米オープンの決勝でセリーナ・ウィリアムズ選手と戦うのが私の夢でした。その夢がかなって本当にうれしいです」と話しました。
そしてみずからを支えてくれた両親について「母は、これまで私のためにたくさん犠牲を払ってくれました。試合は、あまり見にこないのですが、きょうは、見に来てくれて本当にうれしいです。父は私の試合を見るとそわそわしてしまい、きょうも会場に来ていませんが、これから会おうと思います」と話していました。
大坂なおみ選手を指導しているサーシャ・バジンコーチは試合直後に会場で取材に応じ「なおみをとても誇りに思うし、幸運にも彼女の優勝の手助けができたことに深く感謝したい」と話しました。
また、自身が8年、練習相手を務めたセリーナ・ウィリアムズ選手との対戦となった決勝で大坂選手に試合前に伝えた対策については「ウィリアムズ選手はすべてのプレーがよいので、攻略の方法を考えるのが難しかったが、相手を動かし、競り続けることを考えていた。競る展開になれば、フィジカルが強くなっているし、ウィリアムズ選手より安定したプレーができる。
ブレークポイントを握られたとしても、すべてのポイントで競り続けるようにと伝えていた」と話しました。
また、この試合の第2セットでウィリアムズ選手が警告を受け、観客の大きなブーイングが起こる中、試合が行われたことについて「とても困難な状況だったと思う。ああした状況にどう備えればいいのか、教えておくことは難しいことだったが、落ち着いて自分を信じ切り抜けていたのがすばらしかった」と話していました。
アメリカのセリーナ・ウィリアムズ選手は、36歳。
元世界ランキング1位で四大大会で歴代最多の23回の優勝を誇ります。
ウィリアムズ選手は元世界1位で1歳上の姉のビーナス・ウィリアムズ選手と共に、男子選手並みの力強いサーブなどパワフルなプレースタイルで女子テニス界で長くトップ選手として活躍し、去年1月の全豪オープンで四大大会で通算23回目の優勝を果たし、プロが参加できるようになったオープン化以降の歴代最多記録を更新しました。
ウィリアムズ選手はその後はツアーに参加せず、去年9月に娘を出産し、ことし3月、アメリカ カリフォルニア州で行われたツアー大会でおよそ1年2か月ぶりにツアーに復帰して3回戦で姉のウィリアムズ選手にストレートで敗れました。
その次に出場したアメリカ フロリダ州で行われたツアー大会では、初戦で大坂なおみ選手にストレートで敗れています。
その後は元世界女王の強さを示して、復帰後最初の四大大会となる全仏オープンで4回戦進出、続く四大大会、ウィンブルドン選手権では準優勝を果たしていました。
大坂選手は自身が最も憧れて育った選手としてセリーナ・ウィリアムズ選手をあげ、幼い頃から四大大会の決勝で対戦することを夢見てきました。
大坂なおみ選手を今シーズンから指導するドイツ人のサーシャ・バジンコーチは、元世界女王のセリーナ・ウィリアムズ選手やキャロライン・ウォズニアッキ選手など、世界のトップ選手の練習相手を長年にわたって務めてきました。
バジンコーチは去年11月、大坂選手のコーチを務めることになり、大坂選手の憧れのウィリアムズ選手などがどのような練習を行い、試合前にはどう過ごしていたかなど積極的に伝えてきました。
バジンコーチはシーズン中はフォームの変更など技術的な指導はほとんど行なわず、今シーズンは大坂選手の敗因となっていたミスを減らすために、すべてのボールを強く打つのではなく「我慢」してラリーを続け、攻撃のチャンスを待つことや、完璧主義の大坂選手が試合中、ネガティブな思考に陥らないよう、
常にプラスになる言葉をかけて前向きな考えを持つよう、精神面での成長を促す指導を行ってきました。
さらにフットワークや体幹の強化が必要だと考え、専属トレーナーのアブドゥル・シラー氏とともに大坂選手がこれまでに取り組んできたことのない連続的な筋力トレーニングを下半身を中心に行うなどしてきました。
また大坂選手が今シーズン、練習が楽しくなったと話しているようにバジンコーチは、大坂選手と一緒にサーブやストロークの練習をしながら自身も同じ練習を行い、ショットにミスが出た場合は互いに罰を科し合うなどして練習に集中して取り組めるようさまざまな工夫を行ってきました。
テニスの四大大会のシングルスで日本選手がついに頂点の座をつかみました。
四大大会は全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、それに全米オープンの4つを指します。
四大大会のシングルスで、日本選手は戦前に活躍した時期があり、1918年、熊谷一弥さんが全米オープンでベスト4に入り、1920年には清水善造さんがウィンブルドン選手権で、1931年から1933年にかけては佐藤次郎さんが、全仏オープン、全豪オープン、それにウィンブルドンで合わせて5回、ベスト4に進出しました。
このあと、日本選手がベスト4に届かない時期が続きましたが、1973年の全豪オープンで沢松和子さんが女子シングルスでベスト4入りすると、伊達公子さんが1994年の全豪オープン、1995年の全仏オープン、それに1996年のウィンブルドン選手権でベスト4に入りました。
このあと、錦織圭選手が2014年の全米オープンで日本選手として初めてシングルスの決勝に進出し、準優勝となりました。
錦織選手はおととし、2016年とことしの全米オープンでもベスト4入りしました。
そして、この全米オープンで大坂選手が日本選手として初めて四大大会のシングルスで優勝しました。
大坂なおみ選手と対戦したセリーナ・ウィリアムズ選手が行った3回の規則違反について、大会の主催者は、その経緯を説明する声明を出しました。
声明によりますと決勝の第2セット第2ゲームで、ウィリアムズ選手のコーチがアドバイスする姿を審判が目撃し、規則違反として警告を出したということです。
コーチはアドバイスを行ったことを認めている一方、ウィリアムズ選手は否定しているということです。
第2セットの第5ゲームが終わった際にはウィリアムズ選手がラケットを叩きつけて壊したこと、さらに第7ゲームの後に審判への暴言で規則違反があったとしています。
声明では審判の判断が最終決定であり、コートに呼ばれたトーナメントレフェリーなどによっては検討されなかったとしています。
テニスの全米オープンで日本選手として初めて四大大会のシングルスを制した20歳の大坂なおみ選手。飛躍の1年をサポートした「チームナオミ」と呼ばれるコーチやトレーナーが、
四大大会の最終戦でも大坂選手をしっかりと支え、日本テニス界の歴史に残る快挙を成し遂げました。
大坂選手は去年11月、元世界女王のセリーナ・ウィリアムズ選手などトップ選手の練習相手を長年務めていたドイツ人のサーシャ・バジン氏をコーチに迎えました。
バジンコーチのアドバイスのもと、オフシーズンに体重を7キロほど減量、さらにパワーだけのテニスからの卒業を目指しました。
バジンコーチは、大坂選手の敗因の大きな要素となっていたミスを減らすために、すべてのボールを強く打つのではなく「我慢」してラリーを続け、攻撃のチャンスを待つこと、さらに、時速200キロ近い高速サーブでポイントを奪うだけではなく、緩急をつけたサーブで相手をかき乱すことの重要性を教えました。
また、試合中に気持ちが崩れやすい大坂選手に対して、常にプラスになる言葉をかけて前向きな考えを持つよう精神面での成長を促す指導を行ってきました。
さらに、バジンコーチ同様、セリーナ・ウィリアムズ選手の強化に取り組んだ経験を持つ専属のトレーナー、アブドゥル・シラー氏とともにフィジカルの強化にも力を入れてきました。
シラートレーナーのトレーニングは、ランニングしたあと、すぐ筋力トレーニングをして、その後、自転車をこぐという連続的なもので、これにより体幹や下半身の筋力が強化されました。
さらに、シラートレーナーと同じく専属で帯同している茂木奈津子トレーナーが取り組んだ柔軟性の向上で股関節まわりが柔らかくなりました。
コーチやトレーナーは、大坂選手の才能、「最もすばらしいギフト」の1つとして指導に耳を傾ける「素直さ」と、すぐにものにする「吸収力」をあげ、今シーズン、着実に歩みを進める大坂選手の成長に目を細めていました。
そして迎えた全米オープン、コーチやトレーナーの指導が一気に花開きました。
バジンコーチと取り組んだ緩急をつけたサーブがさえたほか、勝負どころでは、ひざがコートにつきそうになるほど深くかがんで鋭いストロークを繰り出しました。
シラートレーナーと茂木トレーナーの取り組みで、重心をより低く、体の軸を安定させて構えられるようになり、要所でのストロークのミスを抑えて、1回戦から3試合連続でストレート勝ちを収めます。
続く4回戦直前の練習のあとには珍しい光景がありました。
四大大会で自身初めての4回戦突破を意識して表情も動きもかたくなっていた大坂選手をリラックスさせようと、バジンコーチが練習後、練習で使用したボールを客席に打ち込んでファンにプレゼントするよう促したのです。
コーチやトレーナーに続いて客席にボールを届け、歓声が上がる中、初めて笑顔になった大坂選手。
4回戦では1セットを奪われたものの競り勝って、準々決勝、準決勝もストレート勝ちします。
迎えた決勝は、「四大大会の決勝で対戦したい」と子どもの頃から憧れ続けたセリーナ・ウィリアムズ選手との対戦。
この元世界女王との一戦でもフィジカルを鍛えてきた成果が出ます。
パワーヒッターどうしのストローク戦となる決勝で鍵を握ったのは左右に揺さぶり合うラリー。
ライン際を狙って勢いよく打ち込まれる鋭いショットを拾おうと不安定な体勢になった際、バランスを崩してミスが続く相手に対して、大坂選手は体の軸がぶれず、精度の高いストロークを返すことができました。
第2セットでは、ウィリアムズ選手に規則違反が相次ぎ、観客から大きなブーイングが沸き起こる異様な雰囲気に。
その中でも、バジンコーチとともに取り組んだ精神面の強化がしっかりと成果を出し、最後まで集中力を切らさなかった大坂選手。
日本選手にとって初めての四大大会シングルス優勝を手にしました。
伸び盛りの20歳をコーチとトレーナーが精神面、体力面、技術面で支えた体制ががっちりとかみあい、「チームナオミ」は結成から8か月余りで歴史的快挙を成し遂げました。