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2017.9.29 : 衆院選2017 . 与党、強まる危機感



衆院が28日解散され、各党は事実上の選挙戦に入った。安倍晋三首相が25日の記者会見で勝敗ラインに設定した「与党の自民、公明両党で過半数」はかなり余裕を持たせた数字と受け止められたが、希望の党に民進党が合流する方向となり、慌てた与党側には一転して危機感が強まる。結成されたばかりの希望の党は候補者も政策も固まらない状態だが、 小池百合子代表(東京都知事)が出馬すれば勢いづく可能性もある。「自民対希望」の選挙構図が一層鮮明になってきた。

 「この選挙戦はたいへん厳しい戦いになる」

安倍首相(自民党総裁)は28日の衆院解散後、党本部で開いた選挙対策本部会議のあいさつをこう切り出した。民進党が希望の党に合流する動きが表面化した27日以降、与党幹部は口々に「厳しい選挙」だと言って党内を引き締めている。 衆院の定数は465(小選挙区289、比例代表176)で、解散前の475から小選挙区6、比例代表4の計10議席削減された。新定数の過半数は233。与党の解散時勢力は322(自民287、公明35)で、自公合わせて90議席減らさなければ過半数を割ることはない。首相が勝敗ラインを「与党で過半数」としたのは「慎重には慎重を期した目標」(自民党選対関係者)だった。
今月上旬に自民党が行った情勢調査では最大30議席減という厳しめの結果だったが、そうなったとしても自民党単独で過半数は維持できる。憲法改正案の発議に必要な3分の2の310議席に与党だけでは届かない可能性があるが、小池氏はもともと改憲論者。日本維新の会と希望の党も加えた「改憲勢力」の連携を見据え、首相は25日の記者会見で「小池氏と安全保障、基本的な理念は同じ」と希望の党批判は避けていた。
だが、民進党が事実上解党し、希望の党に合流すれば、自民と希望が対決する「政権選択選挙」の色合いが強まる。自民党が行った直近の情勢調査では数値がさらに悪化し、過半数割れの可能性もある分析結果が出たという。
「選挙のために集まった、看板を変えた政党に日本の安全、未来を任せるわけにはいかない。そこから生まれるものは混乱でしかなく、決して『希望』は生まれない」
首相は28日の党選挙対策本部会議で希望の党との対決姿勢を鮮明にした。
公明党の山口那津男代表も党両院議員総会で「政権選択の中で相手の姿がよく見えない。看板だけ踊っているが、バラバラに見えたり、重なって見えたり、よく分からない」と民進合流の動きをけん制した。
急速に危機感の広がる与党内を落ち着かせようと、自民党の麻生太郎副総理兼財務相は派閥の会合で「自民党のやってきたことに自信を持ってオタオタしないことだ」と発言。石破茂元幹事長は記者団に「自民党が右往左往する姿が一番良くない」と語った。
自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は「相手が民進党でなくなったことは分かったが、その先にあるのは何か分かりにくい。小池さんが(衆院選候補として)出てください」と記者団に語り、小池氏側を挑発した。

希望 「元首相」排除へ

希望の党は28日、同党への合流方針を決めた民進党との間で公認候補者を選別する協議に入った。
「誰でもいいわけではない。選択肢がないと投票先がない。できるだけ多くの候補を出していく」
日本記者クラブで会見した小池氏は、民進党から多くの候補者を受け入れる姿勢を示しつつ、一部の公認を認めないことも示唆した。細野豪志元環境相はBSフジの番組で「三権の長を経験した方はまずご遠慮いただく」と明示した。
三権の長に当てはまるのは民主党政権の首相を務めた菅直人、野田佳彦両氏。野田氏は同日、「勝負勘のすごい人だ」と小池氏を評価するコメントをしたが、野田政権の環境相を務めた元部下から真っ先に「不合格」を宣告された。
民進党の前原誠司代表はフジテレビの番組で「細野氏は将来のリーダーだ。包容力を持ってほしい」と批判。記者団に「おかしい。小池氏とはそういう話はしていない」と語った。
民進党は衆院解散時の勢力で87人を擁し、両元首相を含め82人が立候補する構え。加えて元職46人、新人91人の公認を内定しており、計約220人が出馬の準備を進めていた。
希望側も100人以上の擁立を急いでいたが、政権選択選挙に持ち込むためには過半数を上回る候補者が必要。民進党から受け入れれば一気に擁立が進む半面、「第2民進党」「選挙互助会」などの批判を浴びるのは間違いない。「憲法改正」や「安全保障関連法」へのスタンスも踏み絵とし、象徴的な人物を排除することによって、民進党色を薄めようとしている。
急な解散で希望側の欲しがるものはほかにもある。民進党の持つ地方組織と資金力だ。ポスター張りなどを手伝う連合組織を味方に付けるためにも、民進党候補者の大半は受け入れる方針とみられている。


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