Forest Studio

2017.6.9 : 「退位」特例法成立

 

「退位」特例法成立 明治以降で初の退位実現へ

天皇陛下の退位に向けた特例法は、参議院本会議で採決が行われ、退席した自由党を除く全会一致で可決・成立しました。特例法は近く公布される予定で、即位後は、生涯、天皇であり続ける仕組みになった明治以降で初めてとなる天皇の退位が実現し、退位後の称号は「上皇」となります。
天皇陛下の退位に向けた特例法案は、先週、衆議院を通過したのに続き、7日の参議院の特別委員会で質疑の後、採決が行われ、退席した自由党を除く全会一致で可決されました。これを受け、9日開かれた参議院本会議で採決が行われた結果、特例法は、委員会での採決と同様に退席した自由党を除く全会一致で可決され、成立しました。
特例法は、立法趣旨として、天皇陛下が、今後ご活動を続けることが困難となることを深く案じておられ、そのお気持ちを国民が理解し共感しているなどとして、天皇陛下の退位と、皇嗣、つまり皇太子さまの即位を実現すると明記しています。また天皇陛下が退位される日は、法律の公布から3年を超えない範囲内で政令によって定める日とし、 退位後の称号を「上皇」とすることなどが盛り込まれています。
特例法は近く閣議などを経て公布される予定で、即位後は、生涯、天皇であり続ける仕組みとなった明治以降では初めてとなる天皇の退位が、遅くとも3年以内には実現することになりました。
政府は今後、退位後の天皇陛下を補佐するための宮内庁の組織やお住まいなどの検討と準備を進めるとともに、国民生活や政治日程への影響も考慮しながら、具体的な退位の期日や新たな元号などの検討を進める方針です。
また特例法を審議した衆参両院の委員会が、安定的な皇位継承を確保するための課題や女性宮家の創設などを、特例法の施行後、速やかに検討することなどを求める付帯決議を可決したのを受け、政府は、具体的な検討を行うことにしています。

宮内庁 儀式や活動など本格検討へ

天皇陛下の退位に向けた特例法の成立を受けて、宮内庁は、天皇陛下の退位の儀式や退位後の活動の在り方などについて本格的な検討を始めることにしています。
天皇の退位は、江戸時代後期の光格天皇以来、およそ200年ぶりのことで、宮内庁は、皇居・宮殿で天皇陛下の退位の儀式を行う方向で平安時代の儀式書「貞観儀式」などを参考に内容についての検討を始めることにしています。
一方、皇太子さまの即位に伴い、今の憲法のもとで初めて即位された天皇陛下の例を参考に「即位の礼」と「大嘗祭」が行われる見通しで、宮内庁は「即位礼正殿の儀」など5つの儀式からなる「即位の礼」を終えたあと、再来年11月に皇居・東御苑で「大嘗祭」を行う想定で政府とともに検討を進めることにしています。
また、特例法の成立によって、近代日本で初めて天皇と上皇が同時に存在することになり、新たな皇室の活動の在り方についても検討が本格化します。
このうち、退位後の天皇陛下の上皇としての活動について、宮内庁は、「象徴としての行為は基本的にすべて新天皇に譲られる」と説明しています。同時に、上皇の活動は、私的なものだけでなく公的色彩のあるものもあり得るとし、実際に活動していく中で形作られていくという見方を示しています。
具体的には、国内外への私的な旅行や、親交を深めてきた海外の賓客や国内外の文化人などとの懇談、それに、音楽会や展覧会への出席などが想定されていて、皇室の一員として新年の一般参賀などで国民の前に姿を見せられることなども検討されるものと見られます。

特例法の概略

特例法には、立法趣旨や退位後の陛下の称号、それに、退位の手続きなどが定められています。
特例法の名称は「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」で、本体となる「本則」5条と「付則」で構成されています。

▲第1条 立法趣旨

第1条では立法趣旨を明記し、天皇陛下が憲法に定められた国事行為のほか、被災地のお見舞いなど、象徴としての公的なご活動に精励してこられた中、83歳とご高齢になられ、今後、これらのご活動をみずから続けることが困難となることを深く案じておられるとしています。
そのうえで、国民が天皇陛下のお気持ちを理解し共感していることや、皇太子さまが57歳となられ、これまでご公務を長期にわたり務められてきた状況に鑑み、天皇が崩御したときに皇位継承が行われると定めた皇室典範4条の特例として、天皇陛下の退位と「皇嗣(こうし)」、つまり、皇太子さまの即位を実現するとしています。
天皇の政治的な発言を禁じた憲法4条などとの関係を考慮し、去年8月のお気持ち表明には直接的に触れていないほか、国会の考え方に明記された「おことば」という文言も用いず、国民が「お気持ち」に共感していることを踏まえて、法整備を行うという趣旨を明確にしました。

▲第2条 退位の日程

2条では、「天皇はこの法律の施行の日限り、退位し、『皇嗣』が直ちに即位する」とし、天皇陛下がこの法律の施行の日に退位し、皇位継承順位第1位である皇太子さまが直ちに即位することを規定しています。

▲第3条 退位後の称号

3条では、退位後の天皇陛下について、称号は「上皇」、敬称は「陛下」とし、崩御された場合には、天皇と同様に、ご葬儀を「大喪の礼」として、「陵」に埋葬するとしているほか、再び天皇に即位することや、三権の長や皇族などからなる皇室会議の議員に就任することはできないとしています。

▲第4条 退位後の皇后さま

4条では、天皇陛下の退位後の皇后さまについて、称号を、歴史上使われたことがない「上皇后」とするほか、先代の皇后の「皇太后」と同じく、摂政や皇室会議の議員に就任することが可能で、亡くなられたあとには「陵」に埋葬するとしています。

▲第5条 退位後の秋篠宮さま

5条では、天皇陛下の退位後、皇位継承順位第1位を意味する「皇嗣」となる秋篠宮さまについて、「皇室典範に定める事項は皇太子の例による」としていて、皇太子と同様に、皇籍から離脱できないことなどを規定しています。

▼付則 法律の施行日など

付則は合わせて11条あり、法律の施行日、つまり、天皇陛下が退位される日は法律の公布から3年を超えない範囲内で政令によって定める日とし、政令を定めるにあたっては、総理大臣があらかじめ皇室会議の意見を聴かなければならないとしています。
さらに、国会の議論を踏まえて、皇室典範の付則に、特例法が皇室典範と一体を成すものであるという規定を加えることが盛り込まれました。皇室典範の改正は、昭和24年に当時の「宮内府(くないふ)」の名称を宮内庁に変更することなどを目的に改正されて以来、およそ70年ぶりとなります。
また、特例法の付則では、退位後の天皇皇后両陛下の生活のための予算は「内廷費(ないていひ)」から支出し、新たな天皇皇后と同じ生計を営む形となるとしています。そして、秋篠宮さまの生活のための予算は、「皇族費」から現在の3倍の金額を毎年、支出するとしています。
一方、宮内庁の組織について、「上皇」を補佐する「上皇職(じょうこう)」や、秋篠宮さまを補佐する「皇嗣職(こうし)」を設けるほか、「皇嗣職」が置かれている間は現在、皇太子さまを補佐している「東宮職(とうぐう)」を置かないとしています。
このほか、歴代天皇の皇位継承の象徴とされる「三種の神器」を贈与税の非課税対象とすることや、祝日の天皇誕生日を皇太子さまの誕生日の2月23日とすることが盛り込まれています。
さらに、皇位の継承に伴って新たな元号を定める政令は、行政手続法の意見公募手続等に関する規定は適用しないとし、国民から意見を求める、いわゆるパブリックコメントは行わないことも盛り込みました。


トップ